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民法には賃貸借契約の規定がありますが、建物と土地については契約期間と目的物が不動産であることから特別法(借地借家法)を定めています。
借家権は建物の賃貸借における賃借人の権利のことをいいます。間借りのような独立性のない建物の一部を借りる場合や、無償契約である使用貸借にも借地借家法は適用外となります。
また借地権と異なり、一時使用目的の建物賃貸借も適用外となります。
借家権の存続期間は、期間を定めた場合には最長期間は制限されません。借地権のような最短期間の制限もありませんが、存続期間を1年未満と定めた場合には存続期間の定めのないものとみなされます。
つまり、借地権のような最短期間がないということはそのまま存続期間の定めのない借家権として扱われます。
ちなみに民法上の賃貸借契約の存続期間は最長期間が20年とされていますが、借地借家法においては除外されています。
存続期間の定めのない借家権については、当事者はいつでも契約の更新を申し入れることができますが、賃貸人からの申し入れには正当な事由が必要となります。
賃貸人からの申し入れから6ヶ月後、賃借人からの申し入れから3ヶ月経過後に借家権は消滅します。
借家権の更新は、当事者が期間満了の1年前から6ヶ月前までの通知期間に、下記のいずれかをしなかった時は、存続期間を除いて従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされます。
借家権の賃貸人からの更新拒絶の通知は一定の正当事由がなければ認められません。
更新拒絶等の通知により借家契約が更新されないにもかかわらず、期間満了後も賃借人が建物の使用を継続した時、賃貸人が遅滞なく異議を述べない場合には従前の契約と同一の条件で更新したとみなされます。
定期借家権とは、存続期間の更新のない借家権のことです。
通常の借家契約では、期間を定めても更新を拒絶するには正当事由がない限り賃貸人の方からの借家契約の更新の拒絶はできず、自動更新となります。
特約で更新しない旨を定めても、賃借人に不利な条項として無効とされます。ゆえに賃貸人寄りの借家契約として、新たに定期借家契約が設けられました。
定期借家契約には
の2種類があります。
定期建物賃貸借契約とは、存続期間の定めがある建物の賃貸借契約を行う場合において公正証書等の書面によって契約をするときに限り契約の更新がないとする旨を定めることができます。
この旨は契約前に書面により賃貸人は賃借人に説明しなければならず、なされなかったときはその部分は無効となり普通の借家賃貸借契約になります。
取壊し予定建物の賃貸借契約とは、法令または契約により一定期間の経過後に建物を取り壊す場合はその時に契約が終了するとし、その事由を定めた書面により契約を締結しなければなりません。
定期借家権の対象は住居に限られず、事業用建築物も対象となります。
借家権とは建物の賃借権のことです。これらの権利は原則として、相続財産(遺産)に含まれます。
借地人や借家人が死亡した場合には、その相続人がこれらの権利、すなわち借地権や借家権を相続して借地人または借家人となるのです。
ただし、無償で土地や建物を借りている場合には、これは賃貸借ではなく使用貸借と言われ、相続財産(遺産)には含まれません。
借地権や借家権を相続した場合は、その賃借物件の貸主(地主や家主)に被相続人と結んだ賃貸借契約の借主の名義を、相続人の名義に書き換えてもらえればそれで完了します。
借家人が死亡した場合、地主や家主が、契約をした本人が死亡したことを理由に、相続人に対して土地や家屋の明渡しを求めてくることがあります。
しかし相続によって借家権を承継した場合は、地主や家主の承諾などは不要ですから、地主や家主から物件の明渡し請求がされたとしても、その請求に応じる必要はありません。
亡くなった人が世帯主で、その人と一緒に住んでいた相続人(妻や子供)は無条件にその権利を承継し、そのまま居住し続けることができます。
被相続人と同居していない場合でも、その法定相続人なら被相続人が借りていた物件の賃借権を相続することになります。
造作とは建物に付加された物件で賃借人の所有に属し、かつ建物の使用に客観的便益を与えるものをいいます。
たとえば障子や雨戸、ガス施設、水道施設や物干し台などが具体的に挙げられます。具体的には、一般にその物の取り外しが困難であれば有益費償還請求で取り外しが容易であれば造作買取請求権となります。
有益費との大きな違いは付加した物の所有権が造作では賃借人にあり、有益費では賃貸人にあることです。
賃貸人の同意を得て付加した造作については、建物の賃貸借契約が期間満了または解約の申し入れの場合は賃貸人に対して造作を直で買い取るべきことを請求することができます。
すなわち債務不履行による解約によって終了となる場合には賃借人は造作買取請求権を行使することはできません。この造作買取請求権は転借人も賃借人と同様に賃貸人に対して権利行使ができます。
造作買取請求権を行使した場合には賃借人(転借人)と賃貸人との間に造作の売買契約が成立したことと同じ法的構成となります。
賃借人と賃貸人は双方合意の上で契約上、造作買取請求権を破棄する特約を結ぶことも可能です。
バブル期の地価の高騰や、税金の増減などで建築物の賃料が不相当となる場合があります。そのようなケースでは、当事者は将来に向かって借賃の増減を請求することができます。
どのような場合でも認められるわけではなく
が成立要件となります。
一定期間は増額しない旨の特約がある場合、その期間内は増額請求ができません。ただし一定期間減額しない旨の特約がある場合は賃借人に不利になるので、特約自体が無効となり、減額請求ができます。
建物賃料の増減について、賃貸人と賃借人とが協議を行いますが、賃貸人からの増額請求について協議が調わない場合、増額を相当とする裁判所の確定判決までは、賃借人は相当と認める額の賃料を支払えば債務不履行となりません。
また賃借人からの減額請求についても協議が調わない場合、減額を正当とする裁判所の確定判決が出るまでは、賃貸人は相当と認める額の建物の借賃の支払いを請求することができます。
ただし裁判が確定したとき、既に支払った額に不足があるとき、賃借人は不足額に年1割分の割合による支払期後の利息を付して支払わなければなりません。