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意思表示を相手方に伝える方法には、電話や面談のようにすぐに伝わる方法と、郵便のように時間がかかる方法があります。
通常、意思表示の伝達は
といったプロセスをたどります。
遠方にいる相手(隔地者)に対する意思表示は意思表明から了知までの間に時間がかかるので、どの時点で意思表示の効力が発生すると考えるべきかが問題となりますが、意思表示が相手方に到達した時からその効力を生ずると定めています。
このような意思表示の効力発生時期を相手が了知できる状態にすることを到達主義と言います。
契約の申込みに対する承諾については、例外的に意思表示の効力発生時期が発信の時とされており、これを発信主義といいます。
民法が契約を成立させる意思表示である承諾について発信主義の立場を取っているのは、契約が成立する時期を到達時点にするよりも発信時点に早めるほうが取引を迅速に行うことができ、承諾の意思表示の発信と同時に履行に着手することができるとして取引の拡大を保護しています。
意思表示に問題がある場合には大きく分けて意思の不存在と瑕疵ある意思表示のの2種類に分けることができます。
意思の不存在とは、心の中でどう思っているか意思表示をする人(表意者)の本当の意思と、実際の表示が異なるケースです。
本当の意思表示ではないのなら、行動を期待できないし、表示どおりの効果を発生させる必要がないので無効です。
しかし意思表示というのは相手がいる行為なので、一定の場合には行為どおりの効果を発生させ、表示を信じた相手方の保護をすることで取引の安全を図っています。
意思の不存在はさらに
の3種類に分けることができます。
表示の内容が真意でないと自身が知りながら意思表示をする心裡留保は原則として表示どおりの効力が発生しますが、表意者が相手方と通じて行う虚偽表示と、表示に対応する意思がなく、しかも意思の不存在を表意者が知らない錯誤については原則として意思表示の効果は無効になります。
当事者が法律行為による意思表示を行い、当事者が意図したとおりの法律効果が発生することが取引の原則です。
しかし何らかの理由により、当事者が法律行為によって実現しようとした法律効果が当事者のどちらかに問題があり、法的な観点から認めるべきではない場合もあります。
そのような場合はその法律行為の効力を否定するという方法によって、その法律効果の発生を法的に否定する無効と取り消しという方法があります。
無効は法律行為をしてもその効力自体が発生しないので、誰でも無効を主張できます。取消しは、法律行為の効力が一応は認められますが、取り消されると当初にさかのぼって効力が否定されて、特定の人物しか主張できません。
それは取消しという制度が意思表示をした者を保護するための制度なので、意思表示をした者及びその関係者に限られているのです。
無効または取消しによって法律行為の効力が否定されると、その法律効果である権利義務は発生しなかったことになります。
その結果、まだ義務を履行していない当事者は、無効または取消しを理由に、相手当事者からの請求に対してその履行を拒むことができ、又は、すでに義務を履行した当事者は、相手当事者が得た利益を不当利得としてその返還を請求することができます。
取り消せる意思表示は
の2種類に分けられます。