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不動産の取引は当事者間でしかわからないので、日本では不動産登記制度によって権利関係を明確にし、権利を有するものを保護するとともに、不動産の取引の安全と円滑化を図っています。
この制度によって所有権等の権利について、第三者に対して登記した権利の存在を明確に主張できることが可能です。
不動産登記は公の帳簿(登記簿)に、土地や建築物の所在・面積の所有者の住所・氏名などを記載して一般公開することにより、権利関係などの状況が把握することができます。
この登記簿は登記所で誰でも請求により閲覧することができます。また登記簿に記録される登記記録は、土地は一筆(一区画)あるいは1個の建築物ごとに表題部と権利部に区分して作成されています。
権利部は甲区と乙区に区分し、甲区には所有権に関する登記の登記事項、乙区には所有権以外の権利に関する登記の登記事項がそれぞれ記録されています。
不動産登記には
という3種類の効力があります。
対抗力とは、第三者に対しても、登記された事実の存在を主張することができることをいいます。二重譲渡の場合等に登記を先に備えた方が権利者となり、第三者に権利を主張することができます。
権利推定力とは、登記がある以上そのとおりの権利関係があるものと推定されることをいいます。
形式的確定力とは、登記がある以上たとえそれが無効であったとしても無視できず、矛盾するような登記は受け付けられません。
権利推定力と似ている公信力という効果がありますが、日本の不動産登記には認められていません。
※公信力とは、登記の内容が真実の権利関係を反映していない場合において、登記内容を信じて不動産取引をした第三者が存在する場合には登記された内容に従って取引の効果を認めるという効力ですが、日本の登記制度においては公信力は認められていません。
つまり不動産では、登記が実体と合致していないときに、登記があることを信頼して取引関係に入った者は、保護されないことになります。
不動産登記には
という強い効力が認められています。
そのため当事者の身元確認と登記の原因となった書類(添付書類)を全て揃えて、書面で申請するという一見煩雑な行為となっています。
不動産登記の手続きは当事者申請主義という、原則として当事者の申請または官庁・公署の嘱託がなければ登記ができない方針をとっています。
例外として表示に関する登記は公益のために、当事者の申請がない場合でも登記官が職権で登記することができるとされています。
権利に関する登記の申請は、法律に別段の定めがない限り登記権利者と登記義務者、またはその代理人が共同して申請しなければなりません。
これを共同申請主義といいます。
共同申請主義の例外として、以下の6種類の単独申請が認められています。
いずれも共同申請によることが不可能な場合や、共同申請によるほどでもない場合となります。
民法において不動産の定義は土地およびその定着物とされています。不動産登記の対象は名のとおり、不動産=建築物、土地であり、その権利となります。
権利は目で確認できるものではない観念的なものであり、取引の際に根拠となるものが必要です。それが不動産登記であり、取引の安全が担保されるのです。
土地とは地面のことで、居住する宅地・田畑等の農地や森や山・沼や池等も個人や法人に所有が認められる場合であれば登記の対象になります。
海面や海底は所有の対象とはならないので土地とみなされません。
土地は筆で表される単位になります。一つの土地を分割する場合には分筆、複数の土地を合体して一つの土地にする場合を合筆といいます。
建築物については個が単位となります。一個の建築物の内部において複数に区分・所有するものについては、各区分が一個の建物とみなされ、各区分を独立して登記することができます(区分所有建築物)。
建築物の判断基準として法務局では
の5点を示し、登記官の判断を統一しています。
仮登記とは、対抗力を発生・変更・消滅させる本登記に対する仮の登記であり、登記の予約のようなイメージです。
仮登記の後、本登記に改めたときは仮登記の順位をそのまま本登記の順位とし対抗力が認められますが、仮登記の対抗力は認められません。
これを仮登記の順位保全効といいます。
仮登記には
の2種類があります。
1号仮登記とは本登記に必要な実体的要件は備えられているものの、登記に必要な識別情報等の添付書類が備えられていない場合にできます。
2号登記とは権利を取得していないものの、将来取得する請求権が発生している場合に、請求権の保全のためにできます。
具体例としては、売買契約の予約が成立し、将来所有権の移転請求権が発生している場合などです。請求権の発生が始期付・条件付である場合もすることができます。
登記名義人の氏名変更や住所変更等、また抵当権の移転登記等、主登記と同じ順位を示す場合は仮登記ではなく付記登記となります。